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日本における携帯キャリアに割り当てられた周波数帯域を完全解説

 2025年現在で携帯キャリアに割り当てられた周波数帯域を一覧でまとめました。また各帯域ごとの特性や、どのように活用しているかもまとめています。

 基地局数については総務省の資料を参考にしており2024年3月末時点の情報です。1

周波数帯一覧

4G LTE帯域として使用しているものは「○」、5G NR帯域として使用しているものは「◎」としている

700M800M900M1.5G1.7G2.1G2.5G3.5G3.7G4.0G4.5G28G
docomo
au
Softbank
Rakuten

700MHz帯 B28/n28

キャリア上り[MHz]下り[MHz]帯域幅[MHz]基地局数
Rakuten715-718770-7733 × 20
au718-728773-78310 × 237,171
Softbank728-738783-79310 × 222,366
docomo738-748793-80310 × 222,940

 5Gのメインカバレッジバンドとして活用されている。au/Softbankは多くを5G転用済み。docomoも5G転用を進めているが4G局が多い。

 700MHz帯は地上波アナログ放送53-62ch跡地を使用しているため、旧式ブースターを利用していると受信障害が出る恐れがある。そのため700MHz帯を運用する前には、周辺地域にチラシ投函のうえ試験電波を発射し、障害が起こらないか確認する必要がある。基地局工事が完了しているにもかかわらず電波がつかめないのはこの事情があるためで、数か月たたないと一般利用可能にならない。また5G転用時や空中線の工事をした際も再確認が必要となるため非常に扱いずらい帯域である。

700MHz利用推進協会からのチラシ

 Rakutenも700MHz帯を割り当てられたが、帯域幅はわずか3MHz×2である。都市部を中心にプラチナバンド局が設置されているが、AST SpaceMobileとの協業により衛星との直接通信に本700MHz帯を利用する計画が出ている。続報に期待したい。

800MHz帯 B18/B19/B26/n5/n18/n26

キャリア上り[MHz]下り[MHz]帯域幅[MHz]基地局数
au815-830860-87515 × 283,941
docomo830-845875-89015 × 274,437

 4Gのメインカバレッジバンドであり、アナログ自動車電話時代から使われている歴史ある帯域である。特にauは自社エリア=800MHz帯エリアである傾向が強く、地下鉄やビル内の対策も必ず800MHz帯+αで行っている。docomoについては2.1GHz帯のみでエリア構築している場面もあるなど思想の違いがみられる。

 旧3Gのメインバンドでもあり、auの上側5MHz幅は2022年までCDMA2000 1xEV-DOの帯域として用いられていた。3G停波後は4Gに転用が進んでいるが、基地局に共用器(CIB)が残っていると全帯域を転用することができず工事が必要である。docomoは下側5MHz幅をW-CDMA帯域として用いているが、auと異なり共用器を用いていないため、3G停波後は4Gに速やかに転用可能と考える。

 auの帯域はBand18、docomoの帯域はBand19と定義されているが、両方を包含するBand26も定義されている。携帯がBand26対応かつMFBI(Multi Frequency Band Indicator)対応であれば800MHz帯に接続可能であるためエリアで悩むこともない。

 docomoの帯域はグローバルバンドであるBand5に内包されていることから、5Gにおいてはn19は定義されずn5の一部とされた。auの帯域はグローバル標準とずれていることからn18として定義されることとなった。(もっとも4Gのメインバンドであることから当分5G転用はされないであろう)

900MHz帯 B8/n8

キャリア上り[MHz]下り[MHz]帯域幅[MHz]基地局数
Softbank900-915945-96015 × 263,316

 4Gのメインカバレッジバンドであり、いわゆる「プラチナバンド」である。Band8はグローバルバンドであることから海外端末であっても対応している場合が多い。

 下側5MHz幅はSoftbank 3Gで使用されていた帯域だが、3G終了に伴い4G転用され始めている。なおBand8は規格上1キャリア当たり最大10MHz幅までのため、3G跡地は5MHz幅のLTEとして運用されている。

 900MHz帯は前述の800MHz帯と近いことから、上り帯域において厳しい制限2がかけられています。Softbankのさらに下側5MHz幅はMCAアドバンス帯域となっているが、移動機に対して厳しいスプリアス制限がかかっている。MCAアドバンスはサービス終了するが、単純にSoftbankのプラチナバンド候補地がが増えるというわけにはいかないのだ。

1.5GHz帯 B11/B21/n74

キャリア上り[MHz]下り[MHz]帯域幅[MHz]基地局数
Softbank1427.9-1437.91475.9-1485.910 × 210,960
au1437.9-1447.91485.9-1495.910 × 211,984
docomo1447.9-1462.91495.9-1510.915 × 231,664

 4Gのトラヒックバンドである。古くはPDC時代に割り当てられ、1.5GHz帯デジタルMCAの再編によって現在の割り当てに落ち着いた。世界的に見ても日本でしか使われていない帯域のため、iPhoneを除けば対応している機種は非常に少ない。一方iPhoneが対応していることから都市部のトラヒック混雑を緩和する目的で活用されている。特にdocomoが発売するスマートフォンにおいては多くがBand21対応であることから重要な帯域であることがうかがえる。

 1.5GHz帯はBSデジタル放送のBS-IF信号帯域と被ることから、シールドされていないプラグやケーブルから電波干渉が起こり、特に携帯から基地局への上り通信に影響がある。一部の基地局においてはBSキャンセラ装置を搭載しており対策をしているようだが、そもそも1.5GHz帯はメインバンドではないので案外大きな問題になっていないのかもしれない。。。

1.7GHz帯 B3/n3

キャリア上り[MHz]下り[MHz]帯域幅[MHz]基地局数
au1710-17301805-182520 × 228,850
Rakuten1730-17501825-184520 × 265,763
Softbank1750-17651845-186015 × 239,964
docomo1765-17801860-188020 × 221,502

 5Gのメインミッドバンドである。au/Softbankは共同で5G JAPANとして1.7GHz/700MHz局の設置を進めている。docomoに割り当てられた帯域は東名阪限定であり、東名阪外においてはRakutenに割り当てられている。また日本国内においては比較的割り当てが新しい帯域である。

 Band3はグローバルバンドであり、海外含めた多くのスマートフォンで利用可能である。au/SoftbankはDSS(Dynamic Spectrum Sharing)を用いて4G/5G両対応することで、700MHz帯との組み合わせで広く5Gエリアを構築している。

2.1GHz帯 B1/n1

キャリア上り[MHz]下り[MHz]帯域幅[MHz]基地局数
au1920-19402110-213020 × 240,338
docomo1940-19602130-215020 × 289,239
Softbank1960-19802150-217020 × 2103,446

 4Gのメインバンドである。docomoやSoftbankは屋内対策として主にBand1を用いており、800MHz帯を用いるauとはやや異なる。

 Band1はグローバルバンドであり、海外含めた多くのスマートフォンで利用可能である。SoftbankはDSSを用いて一部基地局でn1を商用化している。docomoはBDEがポンコツでDSSできないためか、下側10MHz幅を4G、上側10MHz幅を5Gに転用する方式をとっている。

 2025年にauはStarlink衛星との直接通信(Direct-to-Cell)をBand1で実現した。衛星通信とのため都心部を除くエリアではBand1の帯域幅が15MHzないし10MHzに縮小され、下側5MHz幅が衛星通信専用となっている。

2.3GHz帯 B40/n40

キャリア周波数[MHz]帯域幅[MHz]基地局数
au2330-23704086

 5Gのトラヒックバンドである。アジア地域ではメジャーな帯域であるが、日本においては放送FPUが利用している帯域のためダイナミック周波数共用が必要である。

 2025年5月現在で基地局の設置および、MIB/SBI1の確認まではできているが、オペレーター制限のため接続できない場合がほとんど。

2.5GHz帯 B41/n41

キャリア周波数[MHz]帯域幅[MHz]基地局数
WCP2545-25753066,356
UQ2595-26455039,990

 BWA向け帯域である。WCPはAXGP方式、UQはWiMAX方式を用いているが実質的には4Gと一体の運用をされている。

 UQは地下を中心に独自対策をしており、都市部での通信品質向上に役立っている。WCPは電柱やコン柱を活用し小セルのエリア設計を行っており基地局密度が高い。後述の3.5GHz/3.7GHz帯の展開においてはWCP基地局が活用されており、通信品質向上に役立っている。

電柱に設置されているWCP基地局。2.5GHz/3.5GHzを運用している。

 UQは都市圏を中心に下側30MHz幅をn41に転用開始しており、5G転用されたエリアはUQ公式の「WiMAX 2+速度変更予定エリア」から確認できる。一部エリアは50MHz幅をフル転用している。

 WCPはn41への転用は実験どまりであり、商用展開はされていない。

3.4/3.5GHz帯 B42/n78/n77

キャリア周波数[MHz]帯域幅[MHz]基地局数
Softbank3400-34404030,136
docomo3440-34804011,050
docomo3480-35204026,809
au3520-35604024,290
Softbank3560-36004031,967

 4Gのトラヒックバンドであったが、近年急速に5G転用が進んでいる。歴史的な経緯から上側120MHz幅が先に割り当てられ、下側80MHz幅がのちに割り当てられた。そのためSoftbankは細切れの帯域となってしまい利用効率が悪くなっている。

 連続80MHz幅を保有するdocomoはPREMIUM 4Gとして受信時最大1576Mbpsを実現するなど下り速度の高速化に大きく貢献した。しかしdocomoのBand42は下り専用かつキャリアアグリゲーション専用帯域のため、上り通信が不可能で通信品質低下の一因を担ったといっても過言ではない。加えてdocomoが採用した無線機はいずれも5G転用が不可能であり、5G転用にあたって無線機の更改が必要になっている。

3.4/3.5GHz帯のピコセル局。旧式無線機のため5G転用は不可である。

 Softbankは早くから5G転用を開始しており、3.4GHz帯はほぼすべて、3.5GHz帯も多くが5Gに転用されている。4Gのままとなっている基地局は米国制裁のため5Gで利用できないHuawei/ZTEの無線機を利用している場合が多い。いずれもEricsson/NOKIAに更新が進んでおりすべて5G化されるのも時間の問題である。

3.7/4.0/4.5GHz帯 n78/n77/n79

キャリア周波数[MHz]帯域幅[MHz]基地局数
docomo3600-370010010,937
au3700-380010030,293
Rakuten3800-390010017,083
Softbank3900-400010010,090
au4100-42001004,899
docomo4500-460010011,564
Softbank4900-50001000

 5Gのメイントラヒックバンドであり、いわゆる「Sub6」と呼ばれる帯域である。一般に3.4-4.2GHzはC-bandと呼ばれる衛星通信の下り帯域と干渉するため、地球局の近くでは大出力で運用することができない。近年地球局の移設等で干渉協議が必要なエリアが減ったことから、エリアが大幅に拡大した。

 auの基地局数が頭一つ抜けているが、周波数割り当て時の開設計画数を多く申請してしまったためである。計画数に対して設置数が少ないと指導が行われるため、多くの基地局は既設鉄塔の足元に「森のお友達」として森林に向けて設置されている。

オブリゲーションで設置された「森のお友達」局

28GHz帯 n257

キャリア周波数[MHz]帯域幅[MHz]基地局数
Rakuten27000-2740040013,340
docomo27400-278004005,144
au27800-2820040012,763
Softbank29100-295004006,407

 5Gのトラヒックバンドであり、いわゆる「ミリ波」と呼ばれる帯域である。電波の性質上直進性が非常に高く、基地局と移動機の間に遮へい物があると通信が途切れてしまうほどに難しい帯域である。

 高速・大容量の通信が可能であることから、主要駅・イベント会場などを中心にスポット的なトラフヒック対策に用いられている。しかし対応するスマートフォンは一部メーカーのフラッグシップモデルに限られるなど普及が進んでいるとはいえず、帯域を持て余しているといっても過言ではない。

さいごに

iPhoneもミリ波に対応しなさーい!

注釈
  1. 令和6年度携帯電話及び全国BWAに係る電波の利用状況調査の調査結果について ↩︎
  2. 902.5MHz≤fc<907.5MHzにおいて5MHz幅で運用する場合は伝送帯域幅20RB(3.6MHz)以下であること ↩︎

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